命題IV-10
著者:Ευκλείδης(J.L.Heiberg, Ed.)
命題IV-10 底辺を挟む角がそれぞれ残りの角の二倍であるような二等辺三角形を作図すること。
作成:2006-09-16
更新:2011-03-10

命題IV-10

Ἰσοσκελὲς τρίγωνον συστήσασθαι ἔχον ἑκατέραν τῶν πρὸς τῇ βάσει γωνιῶν διπλασίονα τῆς λοιπῆς.
 底辺を挟む角がそれぞれ残りの角の二倍であるような二等辺三角形を作図すること。
 直線ABを引き、その直線を点Cで分割して、ABとBCが定める長方形とCA上の正方形が等しくなるようにする[命題II-11]。Aを中心とし、半径ABの円BDEを描く。円BDEの直径より長くない直線ACに等しい直線BDを円BDEに差し合わせる[命題IV-1]。ADとDCを結ぶ。円ACDを三角形ACDに外接させる[命題IV-5]。
 ABとBCが定める長方形とAC上の正方形は等しく、ACとBDが等しいから、ABとBCが定める長方形はBD上の正方形に等しい。点Bは円ACDの外部にあるから、Bから円ACDへ引かれた二つの直線BAとBDは、一方は円を切り、他方は円周上へ引かれており、ABとBCが定める長方形はBD上の正方形に等しいことから、BDは円ACDに接する[命題III-37]。BDは円に接し、接点Dから円の内部へ弦DCが引かれているのでその弦が接線となす角BDCは対向する切片内の角DACに等しい[命題III-32]。BDCがDACに等しいから、両方にCDAを加えると、BDA全体はCDAとDACの和に等しい。CDAとDACの和は外角BCDに等しいから[命題I-32]、BDAはBCDに等しい。ここで、辺ADとABが等しいことから、BDAとCBDは等しい[命題I-5]。したがって、DBAはBCDに等しく、BDA、DBA、BCDは互いに等しい。角DBCはBCDに等しいから、辺BDはDCに等しい[命題I-6]。BDはCAと等しいことから、CAはCDに等しく、角CDAはDACに等しい[命題I-5]。よって、CDAとDACの和はDACの二倍である。BCDはCDAとDACの和であったから、BCDはCADの二倍である。BCDはBDAとDBAの各々と等しかったから、BDAとDBAの各々もDABの二倍である。
 ゆえに、底辺BDを挟む角の各々が残りの角の二倍であるような二等辺三角形ABDを作図することができた。これが求められていたことであった。
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Euclid(J.L.Heiberg), Euclidis Elementa, Leipzig. Teubner., 1883-1888