8.1節 誤差論の基礎
著者:梅谷 武
語句:系統誤差,偶然誤差,誤差伝播
語句:系統誤差,偶然誤差,誤差伝播
Gaussの誤差論の概要を述べる。
作成:2012-03-03
更新:2021-04-04
更新:2021-04-04
計測における誤差の要因は多様であるが、原因がはっきりしており除去可能な系統誤差けいとうごさ, systematic errorと、そうではない偶然誤差ぐうぜんごさ, random errorの2種類に分けることができる。
また計測には、目的となる量を直接測る直接測定と、目的となる量が直接測れないので関連する量を測り、それらの関係式から計算して求める間接測定がある。
Gaussガウス, Carolus Fridericus Gauss, 1777-1855の誤差論は、系統誤差は除去可能であるため、誤差として偶然誤差だけを考え、さらに偶然誤差を正規分布に従う確率変数であると考えることから始まる。
目的となる量yが直接測定量x1, ⋯, xnから関係式y = f(x1, ⋯, xn)により間接的に求まるとする。各xiの測定値が正規分布N(mi,σi2)に従う確率変数Xiであるとき、yの測定値に対応する確率変数Yがどのような分布に従うかということが問題となる。これを線形の場合と非線形の場合に分けて考える。
f(x1, ⋯, xn)が線形の場合、次の命題によりYも正規分布に従う。
命題8.1.2.2 正規分布の線形結合
独立な確率変数Xi, i = 1,⋯,nが正規分布N(mi,σi2)に従うとき、それらの線形結合Y = c0 + c1X1 + ⋯ + cnXn |
証明
定理5.2.4.1(正規分布の再生性)と同じ。■ f(x1, ⋯, xn)が非線形の場合、一般にはYの確率分布を求めることは容易ではない。そこで、fがC1級であり、さらに誤差が平均0の狭い範囲に集中するという仮定の下で、(m1,⋯,mn)の近傍で一次近似
を考え、線形の場合に帰着させる。これにより確率変数Yは正規分布
に従うと考える。これは誤差伝播ごさでんぱん, propagation of errorの法則と呼ばれている。
y = f(m1, ⋯, mn) + |
| x1 + ⋯ + |
| xn |
N f(m1, ⋯, mn), |
|
| σ12 + ⋯ + |
|
| σn2 |
命題8.1.3.2 誤差伝播の法則
X1, ⋯, Xnをそれぞれ独立でN(mi,σi2), i =1,⋯,nに従う確率変数、y = f(x1, ⋯, xn)をC1級関数とするとき、 分散σi, i =1,⋯,nが比較的小さければY ≡ f(X1, ⋯, Xn) |
N f(m1, ⋯, mn), |
|
| σ12 + ⋯ + |
|
| σn2 |
これは精度を評価していないため、かなり大まかな近似であることは否めない。可能であればYの確率分布を具体的に求めることが望ましい。
[1] 本間 仁, 春日屋 伸昌, 次元解析・最小2乗法と実験式 (応用数学講座 第5巻), コロナ社, 1957
人 物
Gauss ガウス, Carolus Fridericus Gauss, 1777-1855数 学
系統誤差 けいとうごさ, systematic error偶然誤差 ぐうぜんごさ, random error
誤差伝播 ごさでんぱん, propagation of error