3.3節 大数の法則
著者:梅谷 武
語句:Jacob Bernoulli,P.L.Chebyshev,Émile Borel,A.N.Kolmogorov,A.Y.Khinchin,大数の弱法則,大数の強法則
大数の法則についてまとめる。
作成:2012-01-18
更新:2012-02-15
 ある確率分布に従う独立試行を繰り返した結果の算術平均は、試行回数を無限に増やしていくとその分布の平均に収束する、ということを数学的に最初に述べたのがJacob Bernoulliヤコブ・ベルヌーイ, 1654-1705である。P.L.Chebyshevチェビシェフ, 1821-1894はこれを任意の分布の場合に拡張し、確率収束するという形で証明した。これは大数の弱法則だいすうのじゃくほうそく, weak law of large numbersと呼ばれている。

命題3.3.1.2 大数の弱法則

 独立で同分布をもつ二乗可積分の確率変数列{Xn}n∈において、m = E[X1], σ2 = V[X1]とおくと、任意のε>0に対して次が成り立つ。
 
lim
n → ∞
P lb36
X1 + ⋯ + Xn
n
- m
> ε rb36
= 0

証明

Sn =
X1 + ⋯ + Xn
n
とおくと系2.2.2.9より
V[Sn] =
n

i = 1
V[Xi]
=
σ2
n
であるからChebyshevの不等式より
P lb36
X1 + ⋯ + Xn
n
- m
> ε rb36
V[Sn]
ε2
=
σ2
Émile Borelボレル, 1871-1956は大数の弱法則を概収束まで強め、A.N.Kolmogorovコルモゴロフ, 1903-1987A.Y.Khinchinヒンチン, 1894-1959は収束の必要十分条件を求めた。概収束の形の大数の法則は大数の強法則だいすうのきょうほうそく, strong law of large numbersと呼ばれている。

命題3.3.2.2 大数の強法則

 独立で同分布をもつ可積分な確率変数列{Xn}n∈において次が成り立つ。
X1 + ⋯ + Xn
n
→ E[X1] (n → ∞) a.e.

証明

演習とする。■
人  物
Jacob Bernoulli ヤコブ・ベルヌーイ, 1654-1705
"Ars Conjectandi(推論術)"で二項分布に関する大数の法則を示した。
P.L.Chebyshev チェビシェフ, 1821-1894
Émile Borel ボレル, 1871-1956
A.N.Kolmogorov コルモゴロフ, 1903-1987
A.Y.Khinchin ヒンチン, 1894-1959
 
数  学
大数の弱法則 だいすうのじゃくほうそく, weak law of large numbers
大数の強法則 だいすうのきょうほうそく, strong law of large numbers