命題V-8
著者:Ευκλείδης(J.L.Heiberg, Ed.)
命題V-8 等しくない二つの量は別の同じ量に対して大きい方は小さい方よりも大きい比をもち、後者は小さい方に対して大きい方よりも大きい比をもつ。
作成:2006-09-23
更新:2011-03-10
更新:2011-03-10
命題V-8
Τῶν ἀνίσων μεγεθῶν τὸ μεῖζον πρὸς τὸ αὐτὸ μείζονα λόγον ἔχει ἤπερ τὸ ἔλαττον. καὶ τὸ αὐτὸ πρὸς τὸ ἔλαττον μείζονα λόγον ἔχει ἤπερ πρὸς τὸ μεῖζον.等しくない二つの量は別の同じ量に対して大きい方は小さい方よりも大きい比をもち、後者は小さい方に対して大きい方よりも大きい比をもつ。
三つの量α,β,γにおいて次が成り立つ。
α > β ⇒ α:γ > β:γ, γ:α < γ:β |
ABとCを等しくない二つの量とする。ABの方が大きく、Dを別の量とする。このとき、AB対DはC対Dより大きく、D対CはD対ABより大きいと主張する。
ABはCより大きいから、BEをCと等しくとり、AEとEBの小さい方を何倍かすればDより大きくなる[定義DV-4]。最初にAEがEBより小さいと仮定して、AEの倍量FGがDより大きくなるようにする。これと同じ倍数でEBの倍量GHとCの倍量Kを作る。Dの二倍をL、三倍をM、というように順番に一つずつ増やしていって、最初にDの倍量がKより大きくなったものをNとする。
KはNより小さく、Mより小さくない。FG、GHはAE、EBのそれぞれ等倍であるから、FG、FHはAE、ABのそれぞれ等倍である[命題V-1]。FG、KはAE、Cのそれぞれ等倍であるから、FH、KはAB、Cのそれぞれ等倍である。GH、KはEB、Cの等倍であり、EBはCに等しいから、GHはKに等しい。KはMより小さくないから、GHもMより小さくない。FGはDより大きいから、FH全体はDとMの和より大きい。ここで、DとMの和はNに等しく、MはDに三倍で、MとDの和はDの四倍であるから、NはDの四倍である。DとMの和はNに等しく、FHはDとMの和より大きいから、FHはNより大きい。KはNより大きくない。FH、KはAB、Cの等倍で、NはDの倍量であるから、AB対DはC対Dより大きい[定義DV-7]。
さらに、D対CはD対ABより大きいと主張する。
同じようにして、同じ構成においてNがKより大きく、FHより大きくないことを示すことができる。NはDの倍量で、FH、KはAB、Cのそれぞれ等倍であるから、D対CはD対ABより大きい[定義DV-7]。
次にAEがEBより大きい場合を考えよう。小さい方のEBを何倍かすることでDより大きくすることができる。GHをDより大きいEBの倍量とする。これと同じ倍数のAE、Cの倍量をそれぞれFG、Kとする。上と同じようにして、FGより大きくなる最初のDの倍量Nをとる。FGはMより小さくない。GHはDより大きい。したがって、FH全体はDとMの和、すなわちNより大きい。KはNより大きくなく、FGはGHすなわちKより大きく、Nより大きくない。よって、上の議論と同じやり方で証明を完成させることができる。
ゆえに、等しくない二つの量は別の同じ量に対して大きい方は小さい方よりも大きい比をもち、後者は小さい方に対して大きい方よりも大きい比をもつ。これが証明すべきことであった。
Euclid(J.L.Heiberg), Euclidis Elementa, Leipzig. Teubner., 1883-1888