集合と写像
著者:梅谷 武
語句:集合,要素,元,空集合,部分集合,和集合,合併,共通部分,差,補集合,直積,写像,定義域,値域,像,逆像,単射,全射,全単射,合成,逆写像,恒等写像,可換図式
語句:集合,要素,元,空集合,部分集合,和集合,合併,共通部分,差,補集合,直積,写像,定義域,値域,像,逆像,単射,全射,全単射,合成,逆写像,恒等写像,可換図式
本文中で断りなく使用する集合と写像に関する概念や記号をまとめる。
作成:2006-04-06
更新:2011-03-08
更新:2011-03-08
集合しゅうごう, setとはものの集まりのことで、ある集合を構成するもののことをその集合の要素ようそ, elementあるいは元げん, elementといいます。ある集合Aとものaが与えられたとき、aが集合Aの要素であることをa∈AあるいはA∋aと書きます。また、aが集合Aの要素でないことをa∉AあるいはA∌aと書きます。
集合を具体的に書き表すときに、その要素をすべて書く方法があります。例えば、n個の数の集合Aは、その要素を並べて
と書き表します。無限数列のような場合は、
と書き表します。要素ではなくその集合が含む要素が満たすべき条件を書く場合があります。ものxに関する命題P(x)が与えられたときに
によって、条件P(x)を満たすものの集合を表します。
A = { a1, a2, a3, ⋯ , an } |
A = { a1, a2, a3, ⋯ } |
A = { x | P(x) } |
どんな元も含まない集合を空集合くうしゅうごう, empty setといい、∅と書きます。
二つの命題P,Qに対して「Pが正しいならばQが正しい」という命題を
と書き、PならばQと読みます。さらに、P ⇒ QかつQ ⇒ Pという
命題を
と書きます。これは命題PとQが論理的に同等であることを意味します。
P ⇒ Q |
P ⇔ Q |
集合Bの元がすべて集合Aの元であるとき、すなわち、
であるとき、集合Bは集合Aの部分集合ぶぶんしゅうごう, subsetであるといい、B ⊂ AあるいはA ⊃ Bと書きます。
x ∈ B ⇒ x ∈ A |
二つの集合A,Bが与えられたときに、その和集合わしゅうごう, sumあるいは合併がっぺい, unionを
その共通部分きょうつうぶぶん, intersectionを
と表します。和集合と共通部分に関しては次の分配律が成り立ちます。
A ∪ B = { x | x ∈ A または x ∈ B } |
A ∩ B = { x | x ∈ A かつ x ∈ B } |
|
|
| |||
|
|
|
ある一つの決まった集合Xの中で考えます。A,B ⊂ Xの差さ, differenceを
また、Aの補集合ほしゅうごう, complimentを
と表します。
A - B = { x ∈ X | x ∈ A かつ x ∉ B } |
Ac = { x ∈ X | x ∉ A } |
A,Bを二つの集合とするとき、Aの元aとBの元bを順番に並べたもの(a,b)全体の
作る集合をAとBの直積ちょくせき, Cartesian productといい、
と書きます。
A × B = { (a,b) | a ∈ A, b ∈ B } |
A,Bを二つの集合とし、Aの元aに対してBの元f(a)を対応させる規則fが定まっているとき、これをAからBへの写像しゃぞう, mappingといい、f:A → Bと書きます。このとき、Aを写像fの定義域ていぎいき, domain、
を値域ちいき, rangeあるいはfによるAの像ぞう, imageといいます。写像における定義域と値域、その元の間の対応を表現するために次のような図式を使うことがあります。
f(A) = { f(a) | a ∈ A } ⊂ B |
|
写像f:A → Bが与えられているとき、Bの任意の部分集合Qに対して、
をfによるQの逆像ぎゃくぞう, inverse imageといいます。
f-1(Q) = { a ∈ A | f(a) ∈ Q } |
写像f:A → Bが、Aの任意の元a,a'に対して
という条件を満たすとき単射たんしゃ, injectionといいます。また、
という条件を満たすとき全射ぜんしゃ, surjectionといいます。さらに全射かつ単射であるとき全単射ぜんたんしゃ, bijectionといいます。
a ≠ a' ⇒ f(a) ≠ f(a') |
f(A) = B |
三つの集合A,B,Cと二つの写像f:A → B, g:B → Cが与えられたとき、この二つの写像の合成ごうせい, compositiong∘fを(g∘f)(a)=g(f(a))によって定義します。
|
写像f:A → Bが全単射のとき、Bの任意の元bについてf-1(b)=aとなるような元aが唯一つ存在します。これによって逆写像ぎゃくしゃぞう, inverse mappingf-1:B → Aを定義することができます。このとき次が成り立ちます。
ここで、IdA:A → A, a ↦ IdA(a)=aとIdB:B → B, b ↦ IdB(b)=bは恒等写像こうとうしゃぞう, identity mappingと呼ばれるものです。
f-1∘f = IdA, f∘f-1 = IdB |
写像の合成については結合律が成り立ちます。四つの集合A,B,C,Dと三つの写像f:A → B, g:B → C, h:C → Dが与えられたとき、
が成り立ちます。
(h∘g)∘f = h∘(g∘f) |
いくつかの集合の間に写像が定義されていて、それが次のように図式化されるものとします。
このとき、この図式が可換であるとは可能な写像の合成のすべてについてその始点と終点が同じであれば写像として等しいことをいいます。この例でいえばh∘f = i∘gが成り立つことです。可換な図式を可換図式かかんずしき, commutative diagramといいます。
A | ─f→ | B |
↓g | ↓h | |
C | ─i→ | D |
数 学
集合 しゅうごう, set要素 ようそ, element
元 げん, element
空集合 くうしゅうごう, empty set
部分集合 ぶぶんしゅうごう, subset
和集合 わしゅうごう, sum
合併 がっぺい, union
共通部分 きょうつうぶぶん, intersection
差 さ, difference
補集合 ほしゅうごう, compliment
直積 ちょくせき, Cartesian product
写像 しゃぞう, mapping
定義域 ていぎいき, domain
値域 ちいき, range
像 ぞう, image
逆像 ぎゃくぞう, inverse image
単射 たんしゃ, injection
全射 ぜんしゃ, surjection
全単射 ぜんたんしゃ, bijection
合成 ごうせい, composition
逆写像 ぎゃくしゃぞう, inverse mapping
恒等写像 こうとうしゃぞう, identity mapping
可換図式 かかんずしき, commutative diagram
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