はしがき
著者:梅谷 武
『幾何学演習』のはしがき。
作成:2010-06-07
更新:2021-04-25
更新:2021-04-25
『幾何学事始』のはしがきにこの続巻として、古典幾何学を応用したコンピュータグラフィックスの技法を解説する文書を教材用のCGツールのマニュアルとして書く予定であると述べました。その後、2010年1月にツールであるToposNoteを公開し、第一弾として『正多面体論』を公開しましたが、この『幾何学演習』はそれに続く第二弾です。
この『幾何学演習』は、四元数を実用的な道具として使いこなすためのハンドブックにするつもりで書き始めましたが、四元数を使った幾何ライブラリの設計に予想以上に手間取り、現段階ではベクトルと四元数を使って初等幾何、球面三角法、球面線形補間の問題を解く少数の例を示しているに過ぎません。しかし、要所は押さえているつもりなので、聡明な読者はこれを発展させて、さまざまな問題に応用することができることでしょう。
幾何ライブラリはポーランド記法で書かれた式をほぼそのままプログラムに移行できるように設計されており、この流儀で問題を解いていくためには、まずハミルトンのポーランド記法によるベクトル解析の記述に慣れる必要があります。これについては第2章で簡単に説明していますが、おそらくこれだけでは不十分でしょう。文献[4]はハミルトン流の四元数論をポーランド記法を使って日本語で解説したおそらく唯一の貴重な本です。『幾何学事始』を基礎としている本書とは言葉使いや考え方が若干違いますが、実用上の違いはありませんので、合わせて読まれることをお勧めします。より深い理解を得たい読者は、ハミルトンの原著[5]を読む必要があるでしょう。しかし、文章が長々と続いて要点を把握しにくい本ですので、これを読む前に文献[6,7]である程度、記号や概念に慣れておいた方がいいかもしれません。
ToposNote第2版の公開に伴い、サンプルプログラムを変更しました。
リンク切れを修正しました。
[3] 梅谷 武, ToposNote2マニュアル, pisan-dub.jp, 2010
[5] W.R.Hamilton, Elements on quaternions, Longmans, Green, & Co., London, 1866
[6] A.S.Hardy, Elements on quaternions, 1891
Published by SANENSYA Co.,Ltd.