2.2 空間比例
著者:梅谷 武
語句:四元数,回転群,姿勢比,比例
四元数による空間の回転法と物体の運動表現法について述べる。
作成:2010-06-05
更新:2011-03-08
前節において四元数のベクトルへの左あるいは右からの積による作用は、四元数の軸に垂直な平面上での向きを変えない相似変換を引き起こすことを示したが、これはベクトル空間上の変換にはならない。
零でない四元数
qについて、四元数
ℍ上の写像
を考える。
q(sp+tr)q-1 =
sqpq-1 + tqrq-1
|
より、
φqは積を保存する線形写像である。さらに
より、大きさを保存する。これをベクトル
α∈V 3に作用させると
となり、
φqはベクトル空間
V3上の直交変換であることがわかる。
より、
φqはベルソル
Uqによってのみ定まる。
q∈S3について、
φqが恒等写像であるとき
より、
qは大きさが
1のスカラー
±1である。
三次元単位球面
S3から回転群
SO(V3)への写像
φ:S3 SO(V3),
q φq
|
は群の全射準同型であり、その核は
{±1}となる。これにより群同型
が誘導される。
q∈S3について、その軸に垂直な平面上のベクトル
αに
φqを作用させたとき、
は、
qの角度を
θとするとその軸に関する反時計回りの
2θだけの回転である。
φqが
V3上の回転であることがすでにわかっているので、任意のベクトルについても同じ回転である。
アフィン空間(U,V3)における空間的広がりをもつ物体の姿勢を表現するには、物体が定義されているアフィン標構(O;i,j,k)からの回転φq, q∈S3を指定すればよい。
物体の運動は時間
ℝから運動群
V3 ⋊ SO(V3)への微分可能写像で表現することができる。これは重心の並進運動を表わす並進群
V3への写像
T(t)と、重心の回りの回転運動を表わす回転群
SO(V3)への写像
R(t)に分離することができる。
ℝ → V3 ⋊ SO(V3),
t ↦ (T(t), R(t))
|
重心の回りの回転運動は三次元単位球面への写像と考えることができる。
しかし、
±q(t)が同じ回転を表すために、局所的な運動では問題ないが、大域的な運動を考える場合にこの影響が現れる。
[
1] 梅谷 武,
幾何学事始, pisan-dub.jp, 2009
数 学
姿勢比 しせいひ, posture ratio
比例 ひれい, proportion