2.3節 行列表現
著者:梅谷 武
語句:線形写像, 行列
座標や線形写像を行列表現する技法について述べる。
作成:2009-09-01
更新:2011-03-08
自然数
m,nについて、
mn個の体
Kの元を縦横を揃えて並べたもの
を
(m,n)型の
行列ぎょうれつ, matrix、あるいは
(m,n)行列といいます。
i番目の行
を第
i行といい、
j番目の列
を第
j行といいます。
体
K上の
(m,n)行列全体を
M(m,n,K)、
(n,n)行列全体を
M(n,K)と書くことにします。同じ型の行列の和を次のように定義します。
この和により
M(m,n,K)は加法群になります。
Kの元
cの行列への作用を次のように定義します。
これにより
M(m,n,K)は
K上の線形空間になります。
列の数と行の数が一致している二つの行列については積を定義することができます。
(l,m)型と
(m,n)型の行列の積は次のようになります。
cij = | | = ai1b1j + ⋯ + aimbmj,
1 ≦ i ≦ l, 1 ≦ j ≦ n
|
V,Wを
K上の線形空間で、それぞれ基底
(e1,⋯,en),
(u1,⋯,um)をもつものとします。
f:V → Wを
K上の線形写像とすると、
により、
(m,n)行列
(aij)1 ≤ i ≤ m, 1 ≤ j ≤ nが定まります。
x ∈ Vの基底
(e1,⋯,en)による表現を
y=f(x) ∈ Wの基底
(u1,⋯,um)による表現を
とすると
が成り立ちます。これを線形写像の行列表現といいます。
平面(E,V2)において、二つの座標系(O;e1,e2),(O';e1',e2')が与えられたとしましょう。このとき、二つの座標系で表現される二つの座標の間の関係について考えます。
まず、後の座標系を前の座標系で表しておきます。
任意の点
Pを与え、その
(O;e1,e2)による座標を
(p1, p2)、
(O';e1',e2')による座標を
(p1', p2')とします。
これらを使うと
| | O + t1 e1 + t2 e2 + p1' e1' + p2' e2' |
|
| | O + t1 e1 + t2 e2 + p1' a11 e1 + p1' a21 e2 + p2' a12 e1 + p2' a22 e2 |
|
| | O + ( t1 + p1' a11 + p2' a12 ) e1
+ ( t2 + p1' a21 + p2' a22 ) e2 |
|
となり、係数を比較することによって次が得られます。
これを行列表現します。
次のようにまとめて行列表現することもできます。
同じように座標系
(O';e1',e2')から
(O'';e1'',e2'')への座標変換
が与えられたとしましょう。このとき、座標変換を合成して座標系
(O;e1,e2)から
(O'';e1'',e2'')への座標変換を作ることができます。
二つの変換行列の積が合成した座標変換の変換行列になります。
もし、(O;e1,e2)と(O'';e1'',e2'')が一致していれば、合成した変換行列は単位行列になりますから、逆変換の行列は元の行列の逆行列になることがわかります。