2.2節 座標
著者:梅谷 武
語句:座標系, 座標, 正規直交基底
座標系を定めることによって平面上の点やベクトルを座標で表現する技法について述べる。
作成:2009-09-01
更新:2011-03-08
 直線(α,Vα)に付随するベクトル空間Vαの基底eを定めると任意のベクトルaは一意的に
a = λ e,  λ ∈
と表され、写像
Vα longrightarrow a = λ e longmapsto λ
は実線形空間としての同型を与えます。このとき、さらに直線αの原点Oを与えることにより、座標系ざひょうけい, coordinate system(O;e)が定まります。
 直線α上の任意の点Pに対して
P = O + a,  aVα
なるaが一意的に定まりますから、基底eを使って
P = O + λ e,  λ ∈
と表現することができます。この対応により定まる写像
α longrightarrow ,  P longmapsto λ
は全単射であり、λを点P座標ざひょう, coordinateと呼びます。
 直線α上の点P,Qの座標をλ,μとするとき、有向線分PQの定めるベクトルを求めてみましょう。
           P
=
O + λ e
Q
=
O + μ e
より、
[OP]
=
λ e       
[OQ]
=
μ e
であり、PQ = OQ - OPですから、
[PQ]   =   (μ - λ) e
となります。
 平面(E,V2)において、平面E上に無限直線αを引き、その直線上に一点Oを定めます。命題I-11「与えられた直線上の与えられた点から垂直な直線を立てること。」により、Oを通りαに垂直な直線βを引くことができます。α上にOと異なる点Aをとり、β上にOと異なり、OA=OBとなるような点Bをとります。e1,e2V2
       e1
:=
[OA]
e2
:=
[OB]
によって定めます。
 平面E上の任意の点Pが与えられたとしましょう。命題I-12「与えられた点から与えられた無限直線上に垂直な直線を下ろすこと。」によって、αβ上へ垂直な直線を下ろすことができます。その交点をそれぞれA',B'とすると
OP = OA' + OB'
となります。直線α,βはそれぞれe1,e2によって生成されることから、λ12が一意的に存在して、
A' = O + λ1 e1,  B' = O + λ2 e2
となりますから、
P = O + λ1 e1 + λ2 e2
と表現することができます。
 平面Eに付随するベクトル空間V2の元は、平面E上の有向線分の同値類ですから、任意の元aV2はある点P ∈ Eによって、
a = [OP]
と書くことができますから、次の命題が成り立つことがわかりました。

命題2.2.2.4

平面(E,V2)に付随するベクトル空間V2は二次元実線形空間であり、正規直交基底となるベクトルの組(e1,e2)により、次のように表すことができる。
V2 = e1 + e2
 この命題における正規直交基底せいきちょっこうきてい, orthonormal basisとは、線長量Lにおいて単位u ∈ L+が定められていて、基底ベクトルの長さがともにこの単位uに等しく、互いに直交していることを意味しています。基底としては正規直交基底でないものも存在しますが、ここでは話を簡単にするために正規直交基底のみを取り扱います。
 平面(E,V2)に付随するベクトル空間V2の任意の元aは正規直交基底(e1,e2)により一意的に
a = λ1 e1 + λ2 e2,  λ1, λ2
と表され、写像
V2 longrightarrow 2a longmapsto1, λ2)
は実線形空間としての同型を与えます。このとき、さらに平面Eの原点Oを与えることにより、座標系(O;e1,e2)が定まります。
 平面E上の任意の点Pに対して
P  =  O + a,  aV2
なるaが一意的に定まりますから、正規直交基底(e1,e2)を使って
P  =  O + λ1 e1 + λ2 e2,  λ1, λ2
と表現することができます。この対応により定まる写像
E longrightarrow 2,  P longmapsto1, λ2)
は全単射であり、1, λ2)を点Pの座標と呼びます。
 点P,Qの座標を1, λ2), (μ1, μ2)とするとき、 有向線分PQの定めるベクトルを求めてみましょう。
                  P
=
O + λ1 e1 + λ2 e2
Q
=
O + μ1 e1 + μ2 e2
より、
    [OP]
=
λ1 e1 + λ2 e2
[OQ]
=
μ1 e1 + μ2 e2
であり、PQ = OQ - OPですから、
[PQ]    =    (μ1 - λ1) e1 + (μ2 - λ2) e2
となります。
数  学
座標系 ざひょうけい, coordinate system
座標 ざひょう, coordinate
正規直交基底 せいきちょっこうきてい, orthonormal basis
 
Published by SANENSYA Co.,Ltd.