1.6節 比の公式集
著者:梅谷 武
語句:交叉比, 合併, 分離, 反転, 同位比, 乱比例
第V巻の命題をなるべくそのままの形で定式化して証明する。
作成:2009-08-25
更新:2011-03-08
この節は無向量の比の公式集として使えるように、第V巻の命題を整理しながら、なるべくそのままの形で定式化して証明していきます。また一部について線長量の場合の例を図示しました。
無向量
M+の元
a,b,cについて次が成り立つ。
a > b ⇒ a:c > b:c, c:a < c:b
|
証明
自然数
mを
m(a-b) > cとなるようにとり、自然数
nを
(n+1)c > mb ≧ ncとなるようにとると、
となり、
a:c > b:c, c:a < c:bが成り立つ。■
証明
a ≠ bならば、命題V-8よりa:c ∝ b:c, c:a ∝ c:bに矛盾。■
証明
a:c>b:cならば自然数
m,nが存在して
となるから
ma>mbが成り立つ。このことから
a>bがわかる。次も同様。■
無向量
M+の元
a,b,c,dについて次が成り立つ。
a:b ∝ c:d ⇒ a:b ∝ (a+c):(b+d)
|
無向量
M+の元
a,b,c,dにおいて
a:b ∝ c:dならば次が成り立つ。
無向量
M+の元
a,bと任意の自然数
mについて次が成り立つ。
二つの比が比例するとき、それらの前項対前項と後項対後項も比例しますが、
この操作を
交叉比こうさひをとるといいます。
無向量
M+の元
a,b,c,dについて次が成り立つ。
証明
任意の自然数
m,nについて、命題V-15より、
である。命題V-14より、
であるから、
a:c ∝ b:dが成り立つ。■
比の
合併がっぺいとは前項と後項の和の後項に対する比をとることです。
無向量
M+の元
a,b,c,dについて次が成り立つ。
a:b ∝ c:d ⇒ (a+b):b ∝ (c+d):d
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証明
より
m(a+b) ⋛ (m+n)b ⇒ m(c+d) ⋛ (m+n)d
|
■
比の
分離ぶんりとは合併された比を元に戻すことです。
無向量
M+の元
a,b,c,dについて次が成り立つ。
(a+b):b ∝ (c+d):d ⇒ a:b ∝ c:d
|
証明
m(a+b) ⋛ (m+n)b ⇒ m(c+d) ⋛ (m+n)d
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より
■
比の
反転はんてんとは合併された比
(a+b):bにおいて、前項の前項と後項の差に対する比
(a+b):aをとることです。合併された二つの比が比例するとき、それらの反転も比例します。より一般的に次の命題が成り立ちます。
無向量
M+の元
a, b, c < a, d < bについて次が成り立つ。
a:b ∝ c:d ⇒ a:b ∝ (a - c):(b - d)
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証明
| | |
| | (a - c):c ∝ (b - d):d [命題V-17] |
|
| | (a - c):(b - d) ∝ c:d [命題V-16] |
|
■
無向量
M+の元の二つの列
(a,b,c),(d,e,f)において
a:b ∝ d:e, b:c ∝ e:fならば次が成り立つ。
無向量
M+の元の二つの列
(a,b,c),(d,e,f)において
a:b ∝ e:f, b:c ∝ d:eならば次が成り立つ。
二組の同じ個数の無向量の列において、対応するどの二つの隣接項の比も比例するとき任意の同位項どうしの比も比例しますが、このような比を
同位比どういひといいます。
無向量
M+の元の二つの列
(a,b,c),(d,e,f)において
a:b ∝ d:e, b:c ∝ e:fならば
a:c ∝ d:fが成り立つ。
証明
命題V-4より、
ma:nb ∝ md:ne, nb:lc ∝ ne:lf
|
よって、命題V-20を
(ma,nb,lc),(md,ne,lf)に当てはめれば、
となり、定義より
a:c ∝ d:fである。■
次の命題の仮定が満たされるとき、二組の三個の無向量の列は
乱比例らんぴれいするといいます。
無向量
M+の元の二つの列
(a,b,c),(d,e,f)において
a:b ∝ e:f, b:c ∝ d:eならば
a:c ∝ d:fが成り立つ。
証明
命題V-15より、
仮定から
a:b ∝ e:fであるから、
命題V-16より
b:c ∝ d:eの交叉比は等しい。
命題V-15より、
であるから、
よって、命題V-21を
(ma,mb,md),(nc,ne,nf)に当てはめれば、
となり、定義より
a:c ∝ d:fである。■
無向量
M+の元
a,b,c,d,s,tにおいて
a:b ∝ c:d, s:b ∝ t:dならば
(a+s):b ∝ (c+t):dが成り立つ。
証明
s:b ∝ t:dより、命題V-7系から
b:s ∝ d:tである。
(a,b,s),(c,d,t)に命題V-22を適用すれば、
となり、命題V-18より、
であるから、
((a+s),s,b),((c+t),t,d)に命題V-22を適用すれば、
■
無向量
M+の元
a,b,c,dにおいて
aが最大、
dが最小であり、
a:b ∝ c:dならば
a+d > b+cが成り立つ。
証明
交叉比
a:c ∝ b:dに命題V-19を適用すれば、
ここで、
a>cより
(a-b)>(c-d)であり、順序半加群の計算法則により両辺に
b+dを加えれば
■
数 学
交叉比 こうさひ
合併 がっぺい
分離 ぶんり
反転 はんてん
同位比 どういひ
乱比例 らんぴれい