学習法
作成:2016-06-09
更新:2021-04-11
更新:2021-04-11
本教材は19世紀の英国中等教育におけるラテン語教科書を元にして作られている。ラテン文法を体系的に網羅するような教科書とは異なり、ラテン語から英語、英語からラテン語への双方向翻訳訓練を反復しながら基本的な語彙や文型を少しずつ身に付けてラテン語の基礎を築くことを目的としている。本格的にラテン語を学ぶ準備として用いられるものである。
習得する項目としてはまず名詞や形容詞の性の概念がある。英語にも性はあるが、ラテン語には名詞とそれを修飾する形容詞の性は一致しなければならないという基本原則があり、これが文の構造に影響を与えるため常に語の性を意識しなければならない。この意識付け訓練にはかなりの時間が費やされる。次に基本語彙の習得がある。英語はラテン語の影響を受けて発展したためにラテン語を起源とする語が多い。反復練習によりラテン語のみならず英語の語彙も増やすことができる。さらに基本文型の暗記がある。ラテン語は英語とは異なり語順が自由であるが、文法規則だけでは完全に説明しきれない独特の語感があり、これを例文を暗記することにより身に付ける。
ラテン語学習でもっとも習得が困難である名詞、形容詞、代名詞の曲用や動詞の活用がほとんど出てこないのが本教材の特徴である。これらは次の段階で学ぶことになる。
全体は135のレッスンから成り、それぞれが15分以内の演習動画と解説ページにまとめられている。演習では単語や文章を制限時間内にラテン語から英語あるいは英語からラテン語へ翻訳することを繰り返す。制限時間は
- 単語: 4秒
- 単文: 8秒
- 複文:12秒
利用する上で留意すべき点として原書が出版されたのは19世紀半ばであり、近代英語(Modern English)が用いられているということがある。20世紀以降の現代英語とは単語や文法に若干の違いがある。近代英語になじみがない方はラテン語と近代英語を同時に学ぶつもりで取り組んでいただきたい。
解説ページにおいては ftex のラテン語翻訳支援機能により例文の形態解析と辞書検索を行なっており、ラテン語辞書が無くても学習できるようになっている。
演習動画は再生リストにより連続再生することができる。
ここでは音声記号として国際音声記号(IPA)を用い、音声記号は斜線//で囲む。
アルファベットは英語と同じであるが w はない。
古典ラテン語では i には母音/i/、子音/j/という二種類の音素が割り当てられていたが、中世に子音/j/を j で表わす記法が導入された。ここでは中世記法を採用する。
古典ラテン語に u はなく、v に母音/u/、子音/w/という二種類の音素が割り当てられていたが、中世に母音/u/を u で表わす記法が導入された。ここでは中世記法を採用する。
c と k は共に音素/k/が割り当てられる。k はあまり使われない。
y, z はギリシア語からの借用語でのみ用いられ、それぞれ/y/、/z/の音素が割り当てられる。
文字 | 音素 | 名称 |
---|---|---|
Aa | /ə,ɑ,ɑː/ | ā |
Bb | /b/ | bē |
Cc | /k/ | cē |
Dd | /d/ | dē |
Ee | /e,eɪ/ | ē |
Ff | /f/ | ef |
Gg | /g/ | gē |
Hh | /h/ | hā |
Ii | /ɪ,iː,j/ | ī |
(Jj) | /j/ | |
Kk | /k/ | kā |
Ll | /l/ | el |
Mm | /m/ | em |
Nn | /n/ | en |
Oo | /ə,oʊ,əʊ/ | ō |
Pp | /p/ | pē |
/kʷ/ | kū | |
Rr | /r/ | er |
Ss | /s/ | es |
Tt | /t/ | tē |
(Uu) | /ʊ,uː/ | |
Vv | /ʊ,uː,w/ | ū |
Xx | /xs/ | ix |
Yy | /y,yː/ | ȳ |
Zz | /zd,dz/ | zēta |
ラテン語の母音はラテン文字 a, e, i, o, u で表わされるが、それぞれ長音と短音の二種類がある。ラテン語は文字で長短の区別をすることはできないが、辞書や教科書では長母音に長音符号(ā)、短母音に短音符号(ă)を付けることがある。
ここでは原著に従って長母音には長音符号を付けるが、短母音には符号を付けない。長音か短音かどうかは確定されておらず辞書や教科書により異なる場合がある。
ここでは発音やアクセントの詳細には立ち入らない。最初はローマ字読みで十分である。 r を巻き舌で強調すればかなりラテン語の発音に近くなる。
正しい発音を学びたい方は下のMOOCを参照のこと。
原著の記述をほぼそのまま踏襲しているが、最近の考え方とは異なる記述も数多く見受けられるため、特に目立つ相違点については書き直すとともに原著の明確な誤りを訂正している。編集・校正にあたって参考にした文献を次に挙げる。
[4] 呉 茂一, 泉 木吉, ラテン語小文典, 白水社, 1957
[9] C. T. Lewis, C. Short, A Latin Dictionary, Oxford, 1879
[10] C. T. Lewis, Elementary Latin Dictionary, Oxford, 1890
[11] Ben Johnson, latintutorial
[12] Evan der Millner, The London Latin Course
原書の著者である A. H. Monteith 、Ahnメソッドの開発者である F. Ahn に感謝申し上げます。