1.4 立体幾何
著者:梅谷 武
語句:アフィン変換群,アフィン幾何,ユークリッド幾何,合同幾何,相似幾何,等積幾何,合同変換,直交群,相似変換,等積変換,運動群,回転群
立体幾何に関する用語と記号を整理する。
作成:2010-05-12
更新:2011-03-08
空間上の変換がアフィン変換であるとは、直線図形における辺の平行性を保存することである。言い換えれば、平行六面体を平行六面体に写すことである。平行性の保存によって同値な有向線分が同値な有向線分に写されることから、アフィン変換は空間に付随するベクトル空間の変換を誘導する。
空間
(U,V3)上のアフィン変換はベクトル空間
V3上の
正則な線形変換を誘導する。
空間上の並進はアフィン変換であり、並進群V3はアフィン変換群Affine(U)の正規部分群であり、原点Oを固定するアフィン変換全体のなす固定部分群は一般線形群GL(V3)である。
アフィン変換群
Affine(U)は、並進群
V3に内部自己同型によって一般線形群
GL(V3)を作用させた半直積に同型である。
アフィン変換を座標を使って表現する。空間
(U,V3)において正規直交性をもつアフィン標構
(O;e1,e2,e3)を固定する。アフィン変換
f:U → Uが与えられたとして、それに誘導される線形変換を
φ:V3 → V3とし、座標原点と基底の像を座標表現する。
任意の点
Pを与え、その点
Pと像
f(P)を座標表現する。
| | |
| | O + p1' e1 + p2' e2 + p3' e3 |
|
このとき、アフィン変換は次のように行列表現される。
これによりアフィン変換群
Affine(U)は次のように行列表現できる。
Affine(U) =
| | | |
| | | |
∈ GL(3,ℝ), t1,t2,t3 ∈ ℝ
|
ここで
GL(3,ℝ)は実数上の
(3,3)正則行列全体のなす群である。
同じアフィン変換によって、アフィン標構
(O;e1,e2,e3)を座標変換する。
とおくと、
(O';e1',e2',e2')は一般には正規直交性を満たさない。任意の点
Pを与え、その
(O;e1,e2,e3)による座標を
(p1,p2,p3)、
(O';e1',e2',e3')による座標を
(p1',p2',p3')とすると、次が成り立つ。
これによりアフィン変換を与えたときに、それによる図形変換と座標変換は互いに逆変換になっていることがわかる。
空間
(U,V3)において、アフィン変換
f:U → Uが次の条件を満たすとき、合同変換という。
(1.1) | d(P,Q) = d(f(P),f(Q)), P,Q ∈ U
|
|
合同変換から誘導される線形変換はノルムと内積を保存する。
合同変換群
Cong(U)は、並進群
V3に内部自己同型によって直交群
O(V3)を作用させた半直積に同型である。
空間上の相似変換とは多面体を相似な多面体に写すもののことである。多面体の相似性は各面の相似性によって定義されているため、平面幾何の相似性の定義と同様に線長比と平面角の保存によって特徴付けられる。
空間
(U,V3)において、空間
U上のアフィン変換
fが
相似変換そうじへんかん, similar transformationであるとは、次の条件を満たすことである。
(1)
| 線長比を保存する。i.e.
AB:AC ∝ f(A)f(B):f(A)f(C),
∀ A,B,C ∈ U
|
(2)
| 角度を保存する。i.e.
∠ BAC = ∠ f(B)f(A)f(C),
∀ A,B,C ∈ U
|
相似変換群
Similar(U)は、
並進群
V3に内部自己同型によって線長比のなす乗法群
ℝ+と直交群
O(V3)の直積を作用させた半直積に同型である。
Similar(E) ≅
V2 ⋊ (ℝ+ × O(V2))
|
相似変換群Similar(U)は次のように行列表現できる。
Similar(U) =
| | | |
r ∈ ℝ+,
| | | |
∈ O(3), t1,t2,t3 ∈ ℝ
|
等積変換群の原点の固定部分群は、外積のノルムを保存する線形変換の成す群Eq(V3)である。
等積変換群
Equiv(E)は、並進群
V3に内部自己同型によって
Eq(V3)を作用させた半直積に同型である。
| | |
| | |
| | { A ∈ Eq(3,ℝ) ∣ det A = 1 } |
|
| | { A ∈ Eq(3,ℝ) ∣ det A = - 1 } |
|
とおくと
Eq+(3,ℝ)は
Eq(3,ℝ)の正規部分群であり、特殊線形群と呼ばれ、通常
SL(3,ℝ)と表記される。
Eq-(3,ℝ)は部分群にはならない。等積変換群
Equiv(E)は次のように行列表現できる。
Equiv(U) =
| | | |
| | | |
∈ Eq(3,ℝ), t1,t2,t3 ∈ ℝ
|
ユークリッド幾何における運動とは、空間上の図形を合同変換によって連続的に動かすことをいう。言い換えれば、運動とは合同変換群の単位元からの道のことである。したがって、空間における運動全体の集合、すなわち空間の
運動群うんどうぐん, motion groupは合同変換群の単位元を含む弧状連結成分のことである。
原点Oを固定する合同変換全体のなす固定部分群は、内積を保存する線形変換の成す直交群O(V3)であり、その単位元を含む弧状連結成分は原点Oを中心とする回転群SO(V3)である。
空間における運動群
Motion(U)は、並進群
V3に内部自己同型によって回転群
SO(V3)を作用させた半直積に同型である。
アフィン変換群の部分群の包含関係をまとめると次のようになる。
これらの群は並進群
V3との半直積になっているので、その剰余群をとると次のようになる。
[
1] 梅谷 武,
幾何学事始, pisan-dub.jp, 2009
数 学
アフィン変換群 あふぃんへんかんぐん, affine transformation group
アフィン幾何 あふぃんきか, affine geometry
ユークリッド幾何 ゆーくりっどきか, Euclidean geometry
合同幾何 ごうどうきか, congruent geometry
相似幾何 そうじきか, similar geometry
等積幾何 とうせききか, equivalent geometry
合同変換 ごうどうへんかん, congruent transformation
直交群 ちょっこうぐん, orthogonal group
相似変換 そうじへんかん, similar transformation
等積変換 とうせきへんかん, equivalent transformation
運動群 うんどうぐん, motion group
回転群 かいてんぐん, rotation group