4.2節 複素射影直線
著者:梅谷 武
語句:複素射影直線, 複素射影変換群
複素射影直線とその上の複素射影変換群について述べる。
作成:2009-09-14
更新:2011-03-08
 射影直線の定義における実数を複素数に置き換えます。同時には0にならない二つの複素数の組の集合を考えます。
lc72 lb72
z
w
rb72 mid72 lb72
z
w
rb72lb72
0
0
rb72,  z,w ∈ rc72
この集合を次のような同値関係で分類します。
lb72
z1
w1
rb72lb72
z2
w2
rb72lb72
z1
w1
rb72 = s lb72
z2
w2
rb72 ,  s ∈ ×
この同値類を
la72
z
w
ra72
で表わすことにします。これは斉次座標あるいは同次座標と呼ばれるものです。第2成分が0でない同値類全体は
lc72 la72
z
1
ra72 mid72 z ∈ rc72
と表現でき、複素平面と同じものとみなせます。第2成分が0の同値類は
∞ := la72
1
0
ra72
と表現でき、これは無限遠点です。この同値類全体の集合
P1() := ∪ { ∞ }
複素射影直線ふくそしゃえいちょくせん, complex projective lineと呼びます。
 複素射影直線は平面を含みますから射影直線P1とは異なり、無限遠直線ではなく無限遠点との和集合ですから射影平面P2とも異なります。平面幾何を拡張するための新しい空間です。
 複素射影直線P1()には一般線形群GL(2,)が作用します。実際に計算してみると
lb72
a
b
c
d
rb72 la72
z
1
ra72 = la72
az + b
cz + d
ra72    lb72
a
b
c
d
rb72 la72
1
0
ra72 = la72
a
c
ra72
c = 0のときは相似変換でに写されます。
la72
a
d
z + 
b
d
1
ra72    la72
1
0
ra72 ,  c = 0
そうでないときも複素射影直線P1()上の全単射を引き起こします。
la72
az+b
cz+d
1
ra72    la72
a
c
1
ra72 ,  c ≠ 0, z ≠ -
d
c
la72
1
0
ra72    la72
a
c
1
ra72 ,  c ≠ 0, z = -
d
c
lc72 aE2 = la72
a
0
0
a
ra72 mid72 a ∈ × rc72
は複素射影直線上の恒等変換を引き起こしますが、これはGL(2,)の中心ですから、その剰余群をとって、
PGL(2,) := GL(2,) / ×
を複素射影直線上の複素射影変換群ふくそしゃえいへんかんぐん, complex projective transformation groupと呼びます。これは特殊線形群SL(2,)をその中心で剰余したもの
PSL(2,) := SL(2,) / { E2, -E2 }
に同型です。

定理4.2.2.3 複素射影変換群の一意性

複素射影変換群PGL(2,)は次の条件を満たし、かつこれらの条件を満たす変換群はこれ以外に存在しない。
(1) 複素射影直線P1()に推移的に作用する。
(2) 無限遠点の固定部分群は向きを変えない相似変換群に一致する。
(3) 円を円に写し、複比を保存する。
(4) 複素微分可能である。特に等角写像である。

証明

略■
数  学
複素射影直線 ふくそしゃえいちょくせん, complex projective line
複素射影変換群 ふくそしゃえいへんかんぐん, complex projective transformation group
 
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