3.8節 射影幾何
著者:梅谷 武
語句:アフィン平面, 無限遠直線, 射影平面, 投影面
射影平面とその上の射影変換群を定義し、平面幾何が射影幾何で統合されることについて述べる。
作成:2009-09-11
更新:2021-03-28
 平面(E,V2)上に正規直交座標系(O;e1,e2)を定めると、平面上のアフィン変換f:E → Eを次のように表現することができます。
                    f(O)
=
O + t1 e1 + t2 e2
φ(e1)
=
a11 e1 + a21 e2
φ(e2)
=
a12 e1 + a22 e2
P
=
O + x1 e1 + x2 e2
f(P)
=
f(O) + φ(p1 e1 + p2 e2)
=
O + ( t1 + x1 a11 + x2 a12 ) e1 + ( t2 + x1 a21 + x2 a22 ) e2
=
O + x1' e1 + x2' e2
これを変換前後の座標の関係式にし、
lb72
x1'
x2'
rb72 = lb72
t1
t2
rb72 + lb72
a11
a12
a21
a22
rb72 lb72
x1
x2
rb72
さらにまとめて行列表現していました。
lb96
x1'
x2'
1
rb96 = lb96
a11
a12
t1
a21
a22
t2
0
0
1
rb96 lb96
x1
x2
1
rb96
この行列表現では、平面Eを次のような集合と一対一に対応させています。
lc96 lb96
x1
x2
1
rb96 mid96 x1,x2 rc96
 同時には0にならない三つの実数の組の集合を考えます。
lc96 lb96
x1
x2
x3
rb96 mid96 lb96
x1
x2
x3
rb96lb96
0
0
0
rb96,  x1,x2,x3 rc96
この集合を次のような同値関係で分類します。
lb96
x1
x2
x3
rb96lb96
y1
y2
y3
rb96lb96
x1
x2
x3
rb96 = s lb96
y1
y2
y3
rb96 ,  s ∈ ×
この同値類を
la96
x1
x2
x3
ra96
で表わすことにします。第3成分が0でない同値類全体は
A2 := lc96 lb96
x1
x2
1
rb96 mid96 x1,x2 rc96
と表現することができます。これは平面と同じものが埋め込まれているとみなすことができ、アフィン平面あふぃんへいめん, affine planeと呼ばれます。第3成分が0の同値類は
lb96
x1
x2
0
rb96
と表現することができ、この全体は射影直線P1と同じものですが、これをlで表わし、無限遠直線むげんえんちょくせん, line at infinityといい、同値類全体の集合
P2 := A2 ∪ l
射影平面しゃえいへいめん, projective planeと呼びます。
(a1,a2,a3) ≠ (0,0,0)なる実数の組に対して
lc96 lb96
x1
x2
x3
rb96 mid96 a1x1 + a2x2 + a3x3 = 0, x1,x2,x3 rc96P2
を射影平面P2上の射影直線と呼びます。
(a1,a2,a3) = (0,0,a3)のときは、
lc96 lb96
x1
x2
x3
rb96 mid96 a3x3 = 0, x1,x2,x3 rc96 = lc96 lb96
x1
x2
0
rb96 mid96 x1,x2 rc96
となり、無限遠直線lに一致します。
(a1,a2) ≠ (0,0)のときにアフィン平面に制限すればアフィン直線になります。
lc96 lb96
x1
x2
1
rb96 mid96 a1x1 + a2x2 + a3 = 0, x1,x2 rc96A2
逆に任意のアフィン直線は射影直線に拡張することができます。
 射影平面P2には一般線形群GL(3,)が作用します。
lc96 aE3 = lb96
a
0
0
0
a
0
0
0
a
rb96 mid96 a ∈ × rc96
は射影平面上の恒等変換を引き起こし、GL(3,)の中心になっていますから
PGL(3,) := GL(3,) / ×
を射影平面P2上の射影変換群と呼ぶことにします。これはSL(3,)をその中心で剰余したもの
PSL(3,) := SL(3,) / { E3, -E3 }
に同型です。
 任意の射影変換は
lb96
a11
a12
t1
a21
a22
t2
p1
p2
1
rb96
と正規化することができます。
(p1,p2)=(0,0)のときは、アフィン平面をアフィン平面へ、無限遠直線を無限遠直線へ写し、アフィン平面に制限するとアフィン変換になっています。
(p1,p2) ≠ (0,0)のときは、
lb96
a11
a12
t1
a21
a22
t2
p1
p2
1
rb96 la96
x
y
1
ra96la96
a11x+a12y+t1
a21x+a22y+t2
p1x+p2y+1
ra96la144
a11x+a12y+t1
p1x+p2y+1
a21x+a22y+t2
p1x+p2y+1
1
ra144
というように線形変換して正規化するという二段階で構成されますが、この後段の正規化は、z = 1投影面とうえいめん, projection planeとする二次元カメラによる透視変換に他なりません。

定理3.8.2.5 射影変換群の一意性

射影変換群PGL(3,)は次の条件を満たし、かつこれらの条件を満たす変換群はこれ以外に存在しない。
(1) 射影平面P2に推移的に作用する。
(2) 射影直線を射影直線に写し、複比を保存する。
(3) 無限遠直線の固定部分群はアフィン平面上のアフィン変換群Affine(A2)に一致する。

証明

略■
 さまざまな平面幾何の変換群の包含関係は次のようになりました。
 
 
射影幾何:PGL(3,)
 
 
 
 
 
 
 
 
アフィン幾何:Affine(E)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
等積幾何:Equiv(E)
相似幾何:Similar(E)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
合同幾何:Cong(E)
 
 
 
 
 
 
 
 
運動幾何:Motion(E)
 
 
[1] 伊原 信一郎, 河田 敬義, 線型空間・アフィン幾何 (岩波基礎数学選書), 岩波書店, 1997
[2] 佐藤 淳, コンピュータビジョン―視覚の幾何学, コロナ社, 1999
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数  学
アフィン平面 あふぃんへいめん, affine plane
無限遠直線 むげんえんちょくせん, line at infinity
射影平面 しゃえいへいめん, projective plane
投影面 とうえいめん, projection plane
 
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