3.3節 アフィン幾何
著者:梅谷 武
語句:アフィン幾何, 固定部分群
語句:アフィン幾何, 固定部分群
アフィン幾何を定めるアフィン変換群の構造を決定する。
作成:2009-09-07
更新:2021-03-28
更新:2021-03-28
クラインのエルランゲンプログラムに従えば、アフィン幾何あふぃんきか, affine geometryとはアフィン変換群の構造とアフィン変換で不変な性質について調べることです。ここではアフィン変換群の構造を決定します。
平面(E,V2)上の正規直交座標系(O;e1,e2)を固定して、Affine(E)の元gを前小節のように行列表現するものとします。平面上の平行移動群Trans(E)は次のように行列表現されます。
この任意の二元の積を計算すると
となり、Trans(E)はAffine(E)の可換な部分群であることがわかります。
(3.1) |
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アフィン変換に付随する線形変換全体のなす群
を考えます。GL(V2,ℝ)はV2上の正則な実線形変換全体のなす一般線形群であり、この行列表現によって、原点を固定するアフィン変換全体のなす固定部分群こていぶぶんぐん, stabilizerとしてアフィン変換群Affine(E)に埋め込まれています。
GL(V2,ℝ) := |
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| ∈ GL(2,ℝ) |
任意のアフィン変換gは
と一意的に分解されます。正則行列であることから
とおくと
はgの逆行列、すなわちアフィン変換群Affine(E)におけるgの逆元となります。
g = |
| = |
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| = |
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| |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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s1 = -t1b11 - t2b12, s2 = -t1b21 - t2b22とおくと
となり、Trans(E)はAffine(E)の正規部分群になっていることがわかります。
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| |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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定理3.3.2.5 アフィン変換群の構造
アフィン変換群Affine(E)は、平行移動群Trans(E)に内部自己同型によって一般線形群GL(V2,ℝ)を作用させた半直積に同型である。Affine(E) ≅ Trans(E) ⋊ GL(V2,ℝ) |
証明
3.1節の半直積分解条件と3.2節のアフィン変換群の分解に関する補題による。条件(1)は
| = |
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Trans(E) ∩ GL(V2,ℝ) = |
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[1] 伊原 信一郎, 河田 敬義, 線型空間・アフィン幾何 (岩波基礎数学選書), 岩波書店, 1997
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