5.1節 連続分布の基礎
著者:梅谷 武
語句:積率,積率母関数
積率と積率母関数について述べる。確率変数の密度関数形の変数変換の公式を示す。
作成:2012-02-18
更新:2012-03-02
 特性関数はFourier変換であり、積率母関数はLaplace変換である。積率母関数はつねに存在するわけではなく、多くの場合、特性関数の方が使いやすいのであるが、問題によっては積率母関数の方が都合がいい場合もある。

定義5.1.1.2 積率

 確率空間(Ω,F,P)上の実確率変数Xが与えられ、Xr, r = 0,1,2,⋯が可積分であるとき
E[Xr] =
 
 
Ω
X(ω)rP(dω)
=
 
 

xrμX(dx)
積率せきりつ, momentという。さらにm E[X}が存在し、(X-m)r, r = 0,1,2,⋯が可積分であるとき
E[(X-m)r] =
 
 
Ω
(X(ω)-m)rP(dω)
=
 
 

(x-m)rμX(dx)
平均値mの回りのr次の積率という。

定義5.1.1.3 積率母関数

  確率空間(Ω,F,P)上の実確率変数Xが与えられ、0を含む実数区間内のパラメータtに対しetXが可積分であるとき
MX(t) E[etX] =
 
 
Ω
etX(ω)P(dω)
=
 
 

etxμX(dx)
積率母関数せきりつぼかんすう, moment generating functionという。

命題5.1.1.4

 確率空間(Ω,F,P)上の実確率変数Xが与えられ、0を含む実数区間内のパラメータtに対しetXが可積分であり、さらに0で微分可能であれば次が成り立つ。
MX(r)(0) = E[Xr],  r = 0,1,2,⋯

証明

演習とする。■
 同じLaplace変換をもつ関数は測度0の集合を除いて一致することがわかっており。次の性質が成り立つ。

命題5.1.1.7

 確率空間(Ω,F,P)上の実確率変数X,Yが等しい積率母関数MX(t) = MY(t)をもつならば、X = Y a.e.である。

証明

演習とする。■

命題5.1.2.1

 確率空間(Ω,F,P)上の実確率変数Xの分布μXが密度関数fをもつとする。
μX(E) =
 
 
E
f(x)dx
,  E ∈ B1
このとき、XC1級で
dφ(x)
dx
> 0  or  < 0
なる単調関数y = φ(x)を合成した確率変数φ(X)の分布μφ(X)は次の密度関数をもつ。
μφ(X)(E) =
 
 
E
f(φ-1(y))
-1(y)
dy
dy
,  E ∈ B1

証明

演習とする。■
数  学
積率 せきりつ, moment
積率母関数 せきりつぼかんすう, moment generating function