4.1節 離散分布の基礎
著者:梅谷 武
語句:無限直積,δ測度,母関数,確率母関数
可算個の確率空間列に対する無限直積を定義する。無限試行列の確率空間はこれにより構成される。一次元離散分布がδ測度を使って表現できることを述べる。確率母関数で平均や分散が計算できることを述べる。
作成:2012-01-19
更新:2012-02-26
 確率空間列n,Fnn), n ∈ において、
Ω


n = 1
Ωn
F lc48 A = E ×


i = n + 1
Ωi
mid48 E ∈
n

i = 1
Fi
, n ≧ 1 rc48
とおくと、FΩ上の有限加法族となる。
A = E ×


i = n + 1
Ωi
F
に対し、
m(A) 1×⋯×μn)(E)
と定めると、mF上の有限加法的測度となる。

補題4.1.1.2

mF上完全加法的である。

証明

演習とする。■

定理4.1.1.4

mσ[F]上の確率測度として一意的に拡張できる。

証明

演習とする。■

定義4.1.1.6 無限直積

 上のようにして構成された確率空間
lb72


n = 1
Ωn
,


n = 1
Fn
,


n = 1
μn
rb72
を確率空間列n,Fnn), n ∈ 無限直積むげんちょくせき, infinite productという。

定義4.1.2.1 δ測度

 可測空間(,B1)上のδ測度でるたそくど, δ measureを次のように定義する。a ∈ , A ∈ B1に対して
δa(A) = lc72
1,
a
A
0,
a
A
 δ測度δaの分布関数はHeaviside関数Yaである。
Ya(x) = lc72
1,
x
a
0,
x
a
 δ測度δaの平均と分散は次のようになる。
m =
 
 

a(dx)
= a, σ2 =
 
 

(x - a)2δa(dx)
= 0

命題4.1.2.4 一次元離散分布

 可測空間(,B1)上の一次元分布μが離散分布であるための必要十分条件は位置を表わす実数列{an}とその位置の確率を表わす正数列{pn}
pn > 0,
 

n
pn
= 1
が存在して次が成り立つことである。
μ =
 

n
pn δan

証明

演習とする。■

命題4.1.2.6

 可測空間(,B1)上の一次元離散分布n}, μが同じ実数列{ak}上のみに不連続点をもつとき、任意のakについて
 
lim
n → ∞
μn({ak})
= μ({ak})
が成り立てば、n}μに弱収束する。

証明

演習とする。■
 一般に無限級数


k = 0
ak
,  ak
が与えられたとき、形式的冪級数


k = 0
ak xk
をその母関数ぼかんすう, generating functionという。形式的冪級数については『整数論事始』第3章を参照のこと。
 無限級数として一次元離散分布を定める実数列を考えれば、それは正項級数であり、和が1となる。 したがって、その母関数の収束半径は1以上であり、アーベルの定理により[0,1]で一様収束し、項別微分可能となる。

定義4.1.3.3 確率母関数

 非負整数値のみをとる確率変数Xの分布を次のように表わすとき
μX =


k = 0
pk δk
形式的冪級数
fX(x)


k = 0
pk xk
確率母関数かくりつぼかんすう, probability generating functionという。

命題4.1.3.4

 確率母関数fX(x)[0,1]で一様収束し、項別微分可能である。

証明

演習とする。■

命題4.1.3.6

 非負整数値のみをとる確率変数Xについて次が成り立つ。
(ⅰ) E[X] = fX'(1)
(ⅱ) V[X] = fX''(1) - fX'(1)2 + fX'(1)

証明

演習とする。■

命題4.1.3.8

 非負整数値のみをとる独立確率変数X,Yについて次が成り立つ。
fX+Y(x) = fX(x) ∙ fY(x)

証明

演習とする。■
[1] 高木 貞治, 解析概論 改訂第3版, 岩波書店, 2010
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初版1938年、第2版1943年、第3版1961年。
 
数  学
無限直積 むげんちょくせき, infinite product
δ測度 でるたそくど, δ measure
母関数 ぼかんすう, generating function
確率母関数 かくりつぼかんすう, probability generating function