神々の系譜(1)
著者:梅谷 武
天地開闢から三貴子誕生まで。UNICODEフォントに定義されている限り旧字体をそのまま使い、未定義のものは新字体に置き換える。緑字は補足。
作成:2007-09-24
更新:2011-03-10

たかみむすひ(高御產巢日神)

 高天彦神社(奈良県御所市高天)。葛城氏の祖神。

かみむすひ(神產巢日神)

 『出雲風土記』では御祖命(おみやのみこと)と呼ばれ、出雲の神々の祖神とされている。

うましあしかびひこぢ(宇摩志阿斯訶備比古遲神)

 いまだ泥状の地上界の中から葦の芽が萌えあがるようにして成った神。

とよくもの(豐雲野神)

 ここまでの七柱は獨神。
 獨神は無性を意味する。

うひぢに(宇比地邇神)、(妹)すひぢに(須比智邇神)

 妹(いも)は女の兄弟だけでなく妻の意味にも使われた。

いざなき(伊邪那岐神)、(妹)いざなみ(伊邪那美神)

 多賀大社(滋賀県犬上郡多賀町)。
 伊弉諾神宮(兵庫県淡路市多賀)。
 伊邪那岐と伊邪那美による國生み・神生み神話については、ポリネシアを中心とした地域に伝わる神話との類型が指摘されている。

おのごろじま(淤能碁呂島)=?

 伊邪那岐と伊邪那美が別天つ神に与えられた天の沼矛(あめのぬぼこ)を、天の浮橋から泥状の海に差し込んで掻き混ぜて引き上げたときに滴り落ちた塩が積もって出来た島。伊邪那岐と伊邪那美はここに天の御柱と八尋殿(やひろどの)を建てて地上界における活動拠点とする。

ひるこ(水蛭子)

 不具のため葦船で流される。
 西宮神社(兵庫県西宮市社家町)。社伝によれば、蛭子は海を漂った後に摂津國西の浦(西宮)に漂着し、「夷(えびす)三郎殿」と名付けられて大事に育てられ、後に海の神・福の神「えびす(戎)様」、「えべっさん」として祀られるようになったという。

いよのふたなのしま(伊豫之二名島)=四国

  • 伊豫國 → えひめ(愛比賣)
  • 讃岐國 → いひよりひこ(飯依比古)
  • 粟國 → おほげつひめ(大宜都比賣)
  • 土佐國 → たけよりわけ(建依別)

おきのみつごのしま(隱伎之三子島)=隠岐諸島

  → あめのおしころわけ(天之忍許呂別)

つくしのしま(筑紫島)=九州

  • 筑紫國 → しらひわけ(白日別)
  • 豐國 → とよひわけ(豐日別)
  • 肥國 → たけひむかひとよくじひねわけ(建日向日豐久士比泥別)
  • 熊曾國 → たけひわけ(建日別)

いきのしま(伊伎島)=壱岐島

  → あめひとつばしら(天比登都柱)

つしま(津島)=対馬

  → あめのさでよりひめ(天之狹手依比賣)

おほやまととよあきづしま(大倭豐秋津島)=本州

  → あまつみそらとよあきづねわけ(天御虡空豐秋津根別)

きびのこじま(吉備兒島)=児島半島

  → たけひかたわけ(建日方別)

あづきじま(小豆島)=小豆島

  → おほのでひめ(大野手比賣)

おほしま(大島)=屋代島(周防大島)?

  → おほたまるわけ(大多麻流別)

ひめしま(女島)=姫島

  → あめひとつね(天一根)

ちかのしま(知訶島)=五島列島

  → あめのおしを(天之忍男)

ふたごのしま(兩兒島)=男女群島

  → あめふたや(天兩屋)

いはつちびこ(石土毘古神)

 石鎚神社(愛媛県西条市西田)。石と壁土の神。

いはすひめ(石巢比賣神)

 石と砂の神。

はやあきつひこ(速秋津日子神)

 水戸(みなと)の神。

しなつひこ(志那都比古神)

 風の神。
 龍田大社(奈良県生駒郡三郷町立野)。
 伊勢内宮・風日祈宮(三重県伊勢市宇治館町)。
 伊勢外宮・風宮(三重県伊勢市豊川町)。

おほやまつみ(大山津見神)

 山の神。
 大山祇神社(愛媛県今治市大三島町宮浦)。

おほげつひめ(大宜都比賣神)

 「け」は食べ物の意味。日本書紀の保食(うけもち)神と同一神。「うけ」と「け」と同じ意味で、後に出てくる豐宇氣毘賣(とようけびめ)神も同じ食べ物の神である。伊豫之二名島(四國)の粟國も大宜都比賣と呼ばれている。

ひのやぎはやを(火之夜藝速男神)=ひのかがびこ(火之炫毘古神)=ひのかぐつち(火之迦具土神)

 この火の神を生んだことにより、伊邪那美は女陰を焼かれ病に臥せる。
 愛宕神社(京都市右京区嵯峨愛宕町)。
 秋葉神社(静岡県浜松市天竜区春野町領家)。秋葉原という地名は江戸時代の秋葉信仰の名残である。

かなやまびこ(金山毘古神)

 南宮大社(岐阜県不破郡垂井町宮代峯)。
 黄金山神社(宮城県遠田郡涌谷町)。天平21年(749年)陸奥国守百済王敬福は東大寺大仏建立時に黄金(砂金)900両(約13kg)を献上した。
 金屋子(かなやこ)神社(島根県能義郡広瀬町)。古代日本の蹈鞴(たたら)師が製鉄の祖神として祀った。

はにやすびめ(波邇夜須毘賣神)

 榛名神社(群馬県高崎市榛名山町)。

みつはのめ(彌都波能賣神)

 丹生(にう)川上神社中社(奈良県吉野郡東吉野村)。
 大瀧神社・岡太(おかもと)神社(福井県今立郡岡本村大滝区)。越前和紙発祥の伝説に現れる。

わくむすひ(和久產巢日神)

 愛宕神社(京都市右京区嵯峨愛宕町)。
 竹駒神社(宮城県岩沼市稲荷町)。承和9年(842年)小野篁が陸奥国司として赴任した際、伏見稲荷を勧請して創建したと伝えられる。

とようけびめ(豐宇氣毘賣神)

 和久產巢日の娘。
 伊勢外宮(三重県伊勢市豊川町)。 天照大御神が雄略天皇の夢に現れ、御饌の神として丹波國から迎えられたと伝えられる。
 籠神社(京都府宮津市字大垣)。元伊勢と言われる。
 伊邪那美は亡くなり、出雲國と伯伎國の境の比婆の山に葬られる。

なきさわめ(泣澤女神)

 香具山の畝尾の木の本。
 畝尾都多本神社(奈良県橿原市木之本町)
 伊邪那岐は十拳劒(とつかつるぎ)で迦具土の頸を斬りおとす。その刀は天之尾羽張(あめのおはばり)あるいは伊都之尾羽張(いつのおはばり)と呼ばれる。

たけみかづちのを(建御雷之男神)=たけふつ(建布都神)=とよふつ(豐布都神)

 鹿島神宮(茨城県鹿嶋市宮中)
 春日大社(奈良市春日野町)
 石上神宮(奈良県天理市布留町)

くらおかみ(闇淤加美神)

 貴船神社(京都市左京区鞍馬貴船町)
 丹生川上神社上社(奈良県吉野郡川上村)
 丹生川上神社下社(奈良県吉野郡下市町)
 大山阿夫利神社(神奈川県伊勢原市大山)
 伊邪那岐は黄泉國まで伊邪那美を追いかけて、「我をな視たまひそ」といわれたにもかかわらず伊邪那美の体を見てしまう。すると蛆が這い回り、体の各部から雷が湧き出している。
 怒った伊邪那美は八柱の雷神と千五百人の黄泉軍に逃げる伊邪那岐を追わせたが、伊邪那岐は黄泉比良坂の坂本で桃を三箇投げつけて撃退した。すると伊邪那美は身自ら追いかけるが、伊邪那岐は黄泉比良坂を大岩で塞ぎ、事戸を渡す。

おほかむずみ(意富加牟豆美命)

 伊邪那岐は八柱の雷神と千五百人の黄泉軍を撃退した桃に対し、「汝、吾を助けしが如く、葦原中國のあらゆる現しき靑人草の、苦しき瀨に落ちて患い惚む時、助くべし」と告げ、名を与えた。

よもつおほかみ(黄泉津大神)=ちしきのおほかみ(道敷大神)=伊邪那美

 黄泉國から伊邪那岐を追いかけた伊邪那美は黄泉津大神(よもつおほかみ)あるいは道敷大神(ちしきのおほかみ)と呼ばれる。
 伊邪那岐は竺紫の日向の橘の小門の阿波岐原で禊祓をする。
 三柱の綿津見神は阿曇連の祖神であり、綿津見神の子、宇都志日金拆命(うつしひかなさく)の子孫である。
 三柱の筒之男命は墨江の三前の大神である。
 住吉大社(大阪市住吉区住吉)。

あまてらす(天照大御神)

 伊勢内宮(三重県伊勢市宇治館町)。

つくよみ(月讀命)

 伊勢内宮・月讀荒御魂宮(三重県伊勢市宇治館町)。
 伊勢内宮・月讀宮(三重県伊勢市宇治館町)。
 出羽三山・月山神社(山形県鶴岡市)。

たけはやすさのを(建速須佐之男命)

 八坂神社(京都市東山区祇園町)。
 氷川神社(さいたま市大宮区高鼻町)。
 津島神社(愛知県津島市神明町)。
 須佐神社(島根県出雲市佐田町須佐)。
 熊野本宮大社(和歌山県田辺市本宮町)。
Published by SANENSYA Co.,Ltd.