命題IV-4
著者:Ευκλείδης(J.L.Heiberg, Ed.)
命題IV-4 与えられた三角形に円を内接させること。
作成:2006-09-15
更新:2011-03-10

命題IV-4

Εἰς τὸ δοθὲν τρίγωνον κύκλον ἐγγράψαι.
 与えられた三角形に円を内接させること。
 ABCを与えられた三角形とする。三角形ABCに内接する円を描くことが求められている。
 角ABCとACBを直線BDとCDによりそれぞれ二等分し[命題I-9]、その交点をDとする。DからAB、BC、CAに下ろした垂線をそれぞれDE、DF、DGとする[命題I-12]。
 角ABDはCBDに等しく、直角BEDはBFDに等しいから、三角形EBDとFBDは、二つの角が等しく、一つの底辺BDを共有しているので、残りの二辺も等しい[命題I-26]。したがって、DEはDFに等しい。同じ理由でDGもDFに等しく、三直線DE、DF、DGは互いに等しい。よって、Dを中心として、E、F、Gのいずれかを半径として円を描けば、残りの点を通り、各点E、F、Gにおいて直角に交わるので直線AB、BC、CAに接するであろう。なぜならば、もしこれらの直線が円を切ったとすれば、円の直径の端点から直角に引かれた直線が円の内部に含まれることになって矛盾するからである[命題III-16]。したがって、Dを中心として、E、F、Gのいずれかを半径として円を描けば、直線AB、BC、CAを切ることはなく、それらに接する。すなわちその円は三角形ABCに内接する。
 ゆえに、円EFGは与えられた三角形ABCに内接する。これが求められていたことであった。
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Euclid(J.L.Heiberg), Euclidis Elementa, Leipzig. Teubner., 1883-1888