命題III-16
著者:Ευκλείδης(J.L.Heiberg, Ed.)
命題III-16 円の直径の端点から直角に引かれた直線は円の外部に含まれ、この直線と円周との間に他の直線を引くことはできない。また、半円の角はすべての鋭角の直線角よりも大きく、その残りの角はすべての鋭角より小さい。
作成:2006-09-07
更新:2011-03-10

命題III-16

Ἡ τῇ διαμέτρῳ τοῦ κύκλου πρὸς ὀρθὰς ἀπ᾽ ἄκρας ἀγομένη ἐκτὸς πεσεῖται τοῦ κύκλου, καὶ εἰς τὸν μεταξὺ τόπον τῆς τε εὐθείας καὶ τῆς περιφερείας ἑτέρα εὐθεῖα οὐ παρεμπεσεῖται, καὶ ἡ μὲν τοῦ ἡμικυκλίου γωνία ἁπάσης γωνίας ὀξείας εὐθυγράμμου μείζων ἐστίν, ἡ δὲ λοιπὴ ἐλάττων.
 円の直径の端点から直角に引かれた直線は円の外部に含まれ、この直線と円周との間に他の直線を引くことはできない。また、半円の角はすべての鋭角の直線角よりも大きく、その残りの角はすべての鋭角より小さい。
 ABCを円、Dをその中心、ABをその直径とする。AからABに直角に引かれた直線[命題I-11]は円の外部に含まれると主張する。
 もしそうでないとすると、図のCAのように内部にかかる。DCを結ぶ。
 DAはDCに等しいから、角DACは角ACDに等しく[命題I-5]、DACは直角であるから、ACDも直角となるが、三角形ACDにおいて二つの角DACとACDが直角であることになり矛盾である[命題I-17]。したがって、AからABに直角に引かれた直線は円の内部にかかることはない。同じようにして円周上にかかることもないことを示すことができる。よって外部にある。
 次に図のAEについて、直線AEと円周CHAの間に他の直線を入れることができないと主張する。
 もし可能であるとすれば、図のFAのように直線を引くことができる。DGを点DからFAに垂直に下ろす[命題I-12]。AGDは直角であるから、DAGは直角より小さく、ADはDGより大きい[命題I-19]。DAはDHに等しく、DHはDGより小さいから、小さいものが大きくなって矛盾である。したがって、直線AEと円周の間に他の直線を入れることはできない。
 さらに、直線BAと弧CHAに挟まれる半円角は、すべての鋭角の直線角よりも大きく、その残りはすべての鋭角の直線角よりも小さいと主張する。
 もし直線BAと弧CHAに挟まれる半円角より大きいか、直線AEと弧CHAに挟まれる角より小さい直線角があったとすれば、直線AEと弧CHAの間に直線を引くことができ、その直線は直線BAと弧CHAに挟まれる半円角よりも大きく、直線AEと弧CHAに挟まれる角よりも小さい直線角を作る。しかし、このような直線を引くことはできない。したがって、直線BAと弧CHAに挟まれる半円角より大きい直線角はなく、直線AEと弧CHAに挟まれる角より小さい直線角もない。

 このことから、円の直径の端点から直角に引かれた直線は円に接することがわかる。これが証明すべきことであった。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
Euclid(J.L.Heiberg), Euclidis Elementa, Leipzig. Teubner., 1883-1888