ベルヌーイ数の母関数
著者:梅谷 武
語句:母関数,指数型母関数
ベルヌーイ数の母関数について述べる。
作成:2006-05-27
更新:2021-03-17
 有理数列(ai)i∈ℕを係数とする形式的冪級数


i=0
aiXi
(ai)i∈ℕ母関数ぼかんすう, generating functionといい、


i=0
ai
i!
Xi
指数型母関数しすうがたぼかんすう, exponential generating functionといいます。母関数といっても実際には関数ではなくて形式的冪級数と考えています。
 形式的な指数関数eX
(4.1)
eX =


i=0
Xi
i!
によって定義します。これも関数ではなく形式的冪級数ですが、形式的冪級数としての微分に関して関数としての微分と同様に
∂ X
eX = eX
が成り立ちます。

例題4.5.3

(4.2)
lb36


i=0
ai
i!
Xi
rb36lb36


i=0
bi
i!
Xi
rb36 =


i=0
lb36
i

j=0
(i
j
)
ajbi-j
rb36
Xi
i!

証明

lb36


i=0
ai
i!
Xi
rb36lb36


i=0
bi
i!
Xi
rb36 =


i=0
ciXi
とすると、形式的冪級数の積の定義より、
ci =
i

j=0
aj
j!
bi-j
(i-j)!
=
1
i!
i

j=0
(i
j
)
ajbi-j

例題4.5.5

(4.3)
eXe-X = 1

証明

lb36


i=0
1
i!
Xi
rb36lb36


i=0
(-1)i
i!
Xi
rb36 =


i=0
ci
i!
Xi
とすると
ci =
i

j=0
(-1)i
(i
j
)
であるが、これはパスカルの算術三角形の指数iの底辺の交代和であることから
i

j=0
(-1)i
(i
j
)
= δ0i = lc48
1,
i = 0
0,
i ≠ 0
となる。この詳細は演習とする。■
 次の定理はベルヌーイ数を特徴付けるものです。

定理4.5.8

ℚ((X))においてベルヌーイ数の指数型母関数と指数関数に関する次の式が成り立つ。
(4.4)
XeX
eX - 1
=


i=0
Bi
i!
Xi

証明

lb36


i=0
Bi
i!
Xi
rb36(eX - 1)
=
lb36


i=0
Bi
i!
Xi
rb36lb36


i=1
1
i!
Xi
rb36
=


i=1
lb36
i-1

j=0
(i
j
)
Bi
rb36
Xi
i!
ここでベルヌーイ数の漸化式
i-1

j=0
(i
j
)
Bi
= i
を代入すれば、
(左辺) =


i=1
Xi
(i-1)!
= XeX
となる。■
 今後、ベルヌーイ数の指数型母関数を単にベルヌーイ数の母関数と呼び、それをB(X)と書くことにします。
B(X) =
XeX
eX - 1
これに-Xを代入すると
B(-X) =
-Xe-X
e-X - 1
=
eX(-Xe-X)
eX(e-X - 1)
=
X
eX - 1
ですから、
B(X) - B(-X) =
XeX
eX - 1
X
eX - 1
= X
が成り立ちます。これは形式的冪級数としての等式


i=0
Bi
i!
Xi


i=0
(-1)iBi
i!
Xi
= X
ですから、i=1のときB1 = 1/2i=2n+1(n ≧ 1)のときB2n+1=0であることがわかります。

命題4.5.11

1より大きい奇数iに対応するベルヌーイ数Bi0である。
 ベルヌーイ数の母関数の奇数次の項は一次の項を除いて0であることがわかりました。 この一次の項を除いたものをE(X)と置きます。
E(X) =
XeX
eX - 1
X
2
=


i=0
B2i
(2i)!
X2i
これを微分すると
               E'(X)
=
(eX+XeX)(eX-1)-X(eX)2
(eX - 1)2
1
2
=
eX
eX-1
1
2
+
XeX
eX-1
1
X
lb36
XeX
eX-1
rb36
2
この両辺にXを掛けて整理すると
               XE'(X)
=
lb36
XeX
eX-1
X
2
rb36 +
XeX
eX-1
lb36
XeX
eX-1
rb36
2
=
E(X) - E(X)2 +
X2
4
これより、
E(X)2 = E(X) - XE'(X) +
X2
4
が得られますが、これを形式的冪級数としてあらわに書き下すと


i=0
lb36
i

j=0
(2i
2j
)
B2jB2(i-j)
rb36
X2i
(2i)!
=


i=0
(1 - 2i)B2i
X2i
(2i)!
+
X2
4
となります。i>1で両辺の係数を比較すると
(1 - 2i)B2i =
i

j=0
(2i
2j
)
B2jB2(i-j)
右辺の和においてj=0,iのときB2iになるのでそれを左辺に移項し、整理すること によって、オイラーが発見したベルヌーイ数の漸化式が得られます。

命題4.5.13 オイラー

(4.5)
B2i = -
1
2i+1
i-1

j=1
(2i
2j
)
B2jB2(i-j)
, i>1
 この公式を利用するとベルヌーイ数の符号を知ることができます。

系4.5.15

i≧1が奇数のときB2iは正であり、偶数のとき負となる。

証明

 オイラーの漸化式の両辺に(-1)i-1を掛けると
(-1)i-1B2i =
1
2i+1
i-1

j=1
(2i
2j
)
(-1)j-1B2j(-1)i-j-1B2(i-j)
となる。これにより数学的帰納法で(-1)i-1B2i>0を証明する。i=1のときはB2 = 1/6>0である。i-1まで正しいと仮定すると右辺は正であるから、左辺も正となる。■
[1] 荒川恒男, 金子昌信, 伊吹山知義, ベルヌーイ数とゼータ関数, 牧野書店, 2001
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数  学
母関数 ぼかんすう, generating function
指数型母関数 しすうがたぼかんすう, exponential generating function
 
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