連分数
著者:梅谷 武
語句:高木貞治,ハーディ,連分数
連分数について述べる。
作成:2006-04-25
更新:2013-06-14
 連分数は互除法において計算している数をあらわに表現しようとしたときに出現してくるものです。連分数れんぶんすう, continued fractionとは、
a0 +
b1
a1 +
b2
a2 +
b3
⋱ +
bn-1
an-1+
bn
an
という形の有理数のことです。
 互除法で得られる数列は0でない整数a,b(a>b)が与えられたときに、 x0 = a, x1 = bとし、
x0
=
k0 x1 + x2, 0<x2<|x1|
x1
=
k1 x2 + x3, 0<x3<|x2|
xi-1
=
ki-1 xi + xi+1, 0<xi+1<|xi|
xn
=
kn xn+1
というものでした。
 より一般的に2つの数列(xi),(ki)が単に次のような関係を満たしているとしましょう。
x0
=
k0 x1 + x2
x1
=
k1 x2 + x3
xi-1
=
ki-1 xi + xi+1
このとき、数列(ki)によって定まる新しい数列(pi)を次のように定義します。
p0
=
1
p1
=
k0
pi
=
pi-1ki-1 + pi-2, i≧2
最初の方の値を書き下すと次のようになります。
p0
=
1
p1
=
k0
p2
=
k0k1 + 1
p3
=
k0k1k2 + k0 + k2
p4
=
k0k1k2k3 + k0k1 + k0k3 + k2k3 + 1
p5
=
k0k1k2k3k4 + k0k1k2 + k0k1k4 + k0k3k4 + k2k3k4 + k0 + k2 + k4
この数列(pi)を使うとx0xn,xn+1で書くことができます。具体的には
x0 = pnxn + pn-1xn+1, n ≧ 1
と書くことができます。これを数学的帰納法で証明してみましょう。n=1のときは、x0 = p1x1 + p0x2ですが、これはp0=1,p1=k0を代入するとx0 = k0 x1 + x2となり、これは最初の数列の定義そのものです。nまで正しいと仮定します。
x0
=
pnxn + pn-1xn+1
=
pn(knxn+1 + xn+2) + pn-1xn+1
=
(pnkn + pn-1)xn+1 + pnxn+2
=
pn+1xn+1 + pnxn+2
となりn+1でも成り立ちます。このpnをガウスの『整数論』に従って、
pn = [k0,k1,k2,⋯,kn-1], n ≧ 1
と書くことにしましょう。高木貞治Takagi, Teiji, 1875-1960は『初等整数論講義しょとうせいすうろんこうぎ』においてこの記号を踏襲していますが、ハーディHardy, Godfrey Harold, 1877-1947は『数論入門An Introduction to the Theory of Numbers』において、この記号で分子がすべて1となるような連分数を表現しています。現在でもこの記号の使い方は2種類並存しているようです。
 次に数列(qi)(pi)と初期値をひとつずらして
q0
=
0
q1
=
1
qi
=
qi-1ki-1 + qi-2, i ≧ 2
と定義します。最初の方の値を書き下すと次のようになります。
q0
=
0
q1
=
1
q2
=
k1
q3
=
k1k2 + 1
q4
=
k1k2k3 + k1 + k3
q5
=
k1k2k3k4 + k1k2 + k1k4 + k3k4 + 1
この数列(qi)を使うとx1xn,xn+1で書くことができます。具体的には
x1 = qnxn + qn-1xn+1, n ≧ 1
が成り立ちます。この証明は演習としましょう。このqnはガウスの記号を使うと 次のように書くことができます。
qn = [k1,k2,⋯,kn-1], n ≧ 2
ここまでを命題としてまとめておきます。

命題2.7.5

 2つの数列(xi)i≧0,(ki)i≧0
(2.1)
xi-1 = ki-1 xi + xi+1, i ≧ 1
なる関係にあるとき、数列(pi),(qi)
p0
=
1, p1 = k0, pi = pi-1ki-1 + pi-2, i ≧ 2
q0
=
0, q1 = 1, qi = qi-1ki-1 + qi-2, i ≧ 2
と定義すると、ガウスの記号によって
lc48
pn = [k0,k1,k2,⋯,kn-1], n ≧ 1
qn = [k1,k2,⋯,kn-1], n ≧ 2
と書くことができて、任意のn(>0)に対して次が成り立つ。
(2.2)
lb48
x0
x1
rb48 = lb48
pn
pn-1
qn
qn-1
rb48 lb48
xn
xn+1
rb48, n > 0
 前節で2元一次不定方程式の特殊解を求める際に、上の命題とちょうど逆の関係式を使っています。
lb48
xn
xn+1
rb48 = lb48
0
1
1
-kn
rb48lb48
0
1
1
-k0
rb48 lb48
x0
x1
rb48
ここで各行列について
lb48
ki
1
1
0
rb48 lb48
0
1
1
-ki
rb48 = lb48
1
0
0
1
rb48
となっていることから
lb48
x0
x1
rb48
=
lb48
k0
1
1
0
rb48lb48
kn
1
1
0
rb48 lb48
xn
xn+1
rb48
lb48
pn
pn-1
qn
qn-1
rb48
=
lb48
k0
1
1
0
rb48lb48
kn
1
1
0
rb48
特に各行列の行列式が-1であることから、次の式が成り立ちます。
(2.3)
pn
pn-1
qn
qn-1
=
pn qn-1 - pn-1 qn = (-1)n, n > 0
(2.4)
lb48
pn
pn-1
qn
qn-1
rb48
-1
=
(-1)n lb48
qn-1
-pn-1
-qn
pn
rb48
x0 = pnxn + pn-1xn+1qn-1を掛け、x1 = qnxn + qn-1xn+1pn-1を掛けたものを引くとqn-1x0 - pn-1x1 = (pn qn-1 - pn-1 qn)xn = (-1)n xnとなることから、
(2.5)
qn-1x0 - pn-1x1 = (-1)n xn, n > 0
が成り立ちます。ここでa > b, x0 = a, x1 = b, xn = dとすると
a × (-1)nqn-1 + b × (-1)n-1pn-1 = d
となり、拡張互除法で計算していたものは、実はこの数列(qi)であったということがわかりました。
 最後にこの数列(pi),(qi)と連分数の関係について述べることにしましょう。
k0 +
1
k1
=
k0k1 + 1
k1
=
p2
q2
k0 +
1
k1 +
1
k2
=
k0 +
1
k1 +
k1k2 + 1
k2
=
k0k1k2 + k0 + k2
k1k2 + 1
=
p3
q3
k0 +
1
k1 +
1
k2 +
1
k3
=
k0 +
1
k1 +
k1k2k3 + k1 + k3
k2k3 + 1
=
k0k1k2k3 + k0k1 + k0k3 + k2k3 + 1
k1k2k3 + k1 + k3
=
p4
q4
k0 +
1
k1 +
1
k2 +
1
⋱ +
1
kn-1+
1
kn
=
[k0,k1,k2,⋯,kn-1,kn]
[k1,k2,⋯,kn-1,kn]
=
pn+1
qn+1
このように数列(pi),(qi)は数列(ki)によって作られる連分数の分子と分母になっています。最後の式を
k0 +
1
k1 +
1
k2 +
1
⋱ +
1
kn-1+
1
ωn
=
[k0,k1,k2,⋯,kn-1n]
[k1,k2,⋯,kn-1n]
=
pn ωn + pn-1
qn ωn + qn-1
と書き直しておきます。実数を連分数展開するときにこの形がでてくるでしょう。

参考文献

[1] カール・フリードリヒ ガウス(高瀬正仁訳), ガウス 整数論, 朝倉書店, 1995
img
 
 
[2] 高木 貞治, 初等整数論講義 第2版, 共立出版, 1971
img
 
 
[3] G.H. ハーディ, E.M. ライト, 数論入門〈1〉, シュプリンガー・フェアラーク東京, 2001
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高木貞治, 遠山啓の本で学んだ後で読むと、初等整数論の別の側面を見ることができて新鮮に感じます。歴史的な記述や詳細な文献表があり、日本語で読める数学史の資料としても貴重です。
 
[4] 河田 敬義, 数論―古典数論から類体論へ, 岩波書店, 1992
img
 
 
人  物
高木貞治 Takagi, Teiji, 1875-1960
岐阜県出身の数学者。代数的整数論。1920年に類体論を発表する。
ハーディ Hardy, Godfrey Harold, 1877-1947
英国出身の数学者。解析的整数論。インドの数学者ラマヌジャンを援助した。
 
物  品
初等整数論講義 しょとうせいすうろんこうぎ
高木 貞治, 初等整数論講義 第2版, 共立出版, 1971
数論入門 An Introduction to the Theory of Numbers
示野信一, 矢神毅訳, 数論入門I/II, シュプリンガー・フェアラーク東京, 2001
 
数  学
連分数 れんぶんすう, continued fraction
 
Published by SANENSYA Co.,Ltd.